今にして思えば、私の幼い頃の日本は高度経済成長のとば口にありましたが、全体的にはまだまだ貧しかったと記憶しています。
家に風呂は無く、テレビは白黒で、トイレは汲み取り式、ステレオセットなんてありませんでした。
母がいそいそと買った洗濯機は家の中には置き場所がなく、外の洗い場に恭しく設置されました。少しづつ少しづつ生活必需品が買い足されていきました。物が増えるたびに何とも言えない充足感がありました。でも今思えば本当に質素な生活でした。
その後、日本人の可処分所得が急増して行く中で、生活用品が身の回りに溢れ返るようになりました。始めは恐る恐る、そのうち心踊るように、ついには飽き飽きしながら日本人は生活用品を買いました。日本人はただひたすら求め、企業は利益の方程式に従い、経済の狂乱が始まりました。
家電は、神器から日常品になり、ついには使い捨ての消耗品になっていきました。
消費者は便利さと安さを求め、メーカーはそんな消費者の要求に応えつつより多くの利益を求めました。そこに現れたのが、使い捨てを当然のことと考える「大量消費社会」であると思います。物の無い時代から豊かさを求めた当然の流れであったかもしれません。
この頃の家電品の一つの特徴としてあげられるのがプラスチック化です。
それまでは木材や金属で作られていたものが、コストダウンのためにプラスチック成型で作られるようになりました。
部品のプラスチック化はコストダウンばかりではなく、木材や金属では加工が難しい形状を比較的容易に実現できるため、デザインに幅が出て、消費者も受け入れ易かったのであろうと想像します。しかし、プラスチック製品イコール安物のイメージはすっかり根付いてしまったように感じます。
さて、ソニーのAMラジオ ICR-S71。発売開始は1986年7月とのこと。外装は、文字板の金属以外、全面プラスチックです。
屋外、特に船上などでの使用を想定しており防塵防滴機能を有します。AMしか受信できませんが非常に感度の良いラジオです。
プラスチックながらこのラジオに安っぽさは感じません。
安くするためにプラスチック化するという設計思想ではなく、明らかにプラスチックの性能を活かす設計がなされていると考えられます。プラスチックは潮風、波しぶきに当たっても錆びることなく、多少の衝撃は受け止めてくれます。屋外で使うラジオの材料としてはメリットが多いと考えられます。心配なのは紫外線による劣化ですが、自衛隊の船舶などでも使用されている話もあり、大きな問題はないのではないかと予想できます。
プラスチック部品は十把一絡げの品質ではなく、程度の差が歴然と現れます。材料の選択に始まり、エッジ、シボ、平面性など手にとって眺めていれば、その奥の技術と労力がはっきりと伝わってきます。
このラジオ、液晶表示など無く、バックライトも無く、外観は無骨なデザインではありますが、温かみのある音で人の声を優しく伝えてくれます。
なお、電池は単一2本の仕様でいつ電池を交換したのか忘れてしまうほど、持ちがいいです。
ありがとうございます。
楽しく読ませて頂きました。
返信削除ishidaさんから見たらまだまだ私は若造の部類かも知れません。
文面からなんとなく時代が分かります。
うちは物心付いたときにはモノクロTVや洗濯機、冷蔵庫はありましたが今と比べると、やはり色々と家電類は高価でした。ただ、造りは頑丈でしたね。
また、壊れても修理が普通でしたし、今みたいに壊れたら買い替えという時代ではありませんでした。ですから粗大ゴミの日には捨てられた家電から部品を抜いて保管してはもっぱら壊れた家電は私が直していました。その甲斐あってか、機械に対する恐怖は皆無でもあります。
文中のICR-S71ですが、本当に良いラジオですよね。
生産完了(製造終了)は残念ですが、これも時代の流れなのでしょうか。
小型・軽量化。電子部品の集積率の向上。省電力化。
デカくて重くて無骨なラジオはやはり消えていく運命なのですね。
・・・といいつつ、たぶん死ぬまで使い切れない程の台数はちゃっかり確保しています。
だって、これに取って代わるラジオは存在しませんから。
aomorikumaさん
返信削除同世代かもですね。
面白い変化の時代を過ごせたなぁと思っています。これからもどんどん変わるでしょう。
ICR-S71の製造終了は、頂いたコメントで知りました。しばらく前から言われていましたが、残念ですね。
私は1台しか持っていませんので、大事に使って行きたいと思っています。
ありがとうございます。